教材数2万3000本超。アラビア語圏オンライン教育の雄Nafham

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日本ではコロナウイルスの影響で約3か月教育機関が休校となり、教育を受けることのできない状況が続いていた。一方、海外では休校後、迅速にオンライン授業が始まった事例も多く見られる。

一方アフリカでは、学校の再開は来年に延期される国などもあり、教育の機会が限定されている状況が続いている。

コロナ禍のエジプトで、いま子どもたちの学びを支えているのが、教育スタートアップNafham(ナファム)だ。

エジプトの教育制度

エジプトでは、日本と同じ小学校6年間、中学校3年間、高校3年間、大学4年間で教育が行われている。義務教育は、小学校・中学校の計9年間。
教育課題として、首都部と地方での教育格差、公立の教員の低賃金、詰め込み教育、日本以上の学歴社会、1クラスあたりの児童数が多いことなどが挙げられる。また、小学校は基本的に無料だが教科書代等は支払う必要があるため、貧しい家庭の子どもは小学校に通えないという実態もある。

エジプトの小学校では2年生までは全員が進級できるが、3年生以降は進級試験が実施される。試験に通らない場合は留年で、卒業には卒業試験に合格しなければならない。そのため、エジプトでは進級・卒業試験に合格するための詰め込み教育が行われていることが多い。

また、エジプトでは20歳未満の人口が全体の42.4%を占めると言われている。そのため、校舎の数が足りず教員1人が一度に多くの子どもの授業を行うことも珍しくないため、児童一人ひとりの学習達成度を把握できていないのが現状だ。

学歴によって将来が決まるエジプトでは、金銭的に余裕のある家庭は民間の家庭教師を雇うことが一般的で、家庭の経済力による教育格差の拡大が懸念されている。
Nafhamが提供するオンライン学習コンテンツは、この教育課題を解決する一助になるのではないかと注目されている。

個々に合わせたオンライン教育

2012年にスタートしたNafhamは、幼稚園から高校までの幅広い教育コンテンツを無料動画で提供している。動画は5~15分ほどで構成されており、現在2万3000本以上が公開されている。動画教材の中には再生数1億回を超えているものもある。

学年や学期、教科などから簡単に必要な動画を検索することができ、自分のレベルにあった動画を視聴できる。

提供されている動画はエジプトで使用されているアラビア語で作られている。そのため、エジプト国内にとどまらず、サウジアラビア、シリアなどのアラビア語圏からもアクセスされている。

スマートフォンのアプリやウェブサイト、YouTube等で公開されている動画は世界中のどこからでもアクセス可能で、月50万人以上の人が利用している。

『世界子供白書2017』によるとエジプトでは2011~2016年の小学校純就学が98%、前期中等教育(中学校)純就学率が85.5%。これに対して、携帯電話の保有率は114%だが、インターネットユーザーは39%にとどまっている。学校に通う子どもたちの中で、インターネットへのアクセスの可否で新たな格差が生まれるという懸念もある。

さらに、急激な人口増加によって高学歴人材でも就職が難しいという問題も、他のアフリカ各国同様、エジプトでも表面化している。優秀な人材が起業や新規サービスなどによって新たな雇用を生み出せるか、注目したい。

会社名Nafham
設立年2012年
創業者Ahmed Alfi, Mostafa Farahat, Muhammad S. Habib
展開国エジプト・アルジェリア・クウェート・シリア・サウジアラビア・UAE・(オンラインコンテンツは場所を問わずアクセス可能)
領域教育
サービスオンライン学習コンテンツの提供
解決する課題教育格差の解消
独自の強みコンテンツの豊富さ
調達金額80,000米ドル(https://www.crunchbase.com/organization/nafhamより)
ウェブサイトhttps://www.nafham.com/
連絡先mosti@nafham.com +201000297400