ソーシャルコマースに特化したSaaSの登場から読み解く新興国での発展の可能性

注目スタートアップEC,ケニア,プラットフォーム

新興国を中心にFacebookやInstagram上で商品の売買が盛んにおこなわれている。

なぜ、こうしたソーシャルコマースが新興国で流行するのか。

ソーシャルコマースとは、ソーシャルメディア上で、通常のEコマースには欠けていた店員さんとの会話や友人との相談を通じて何か商品を購入するという本来の買い物のあり方を実現し、利便性の高い状態で提供される新しいオンライン上での買い物の形

ケニアを例にお話すると、大きく分けて3つの理由があると考えている。

新興国では、スマートフォンの普及率が高まっているものの、まだまだハイスペックなスマートフォンを買う余裕がなく容量が限られている。そのため、多くのアプリは必要がないと判断されるとすぐにアンインストールされてしまう。

数多くあるアプリの中でも最終的に彼らのスマートフォンの中でアンインストールされず残っているのがSNSなのだ。これがソーシャルコマースが流行する1つ目の理由。

2つ目は、人口に対して、職が足りておらず、生計をたてるために個人事業主として商品の販売を行う人が多いこと。趣味として商品の販売を行うのではなく、生きていくために個人事業主としてオンラインもしくはオフラインで商品販売を始める人がとても多い。

主に、彼らが商品をオンライン上で販売するための方法としてSNSが活用されている。

3つ目が、フェイク商品が多く出回っている新興国では、信頼できる人からでないと購入しない方も多い。SNS上での販売であれば、気軽に質問をすることができるし、チャットを通じて信頼に足る商品、販売者か確認することができる。

疑問点をチャットで気軽に解消できる点もソーシャルコマースが新興国で普及している理由なのだ。

こうした理由から、新興国では通常のEコマースよりもソーシャルコマースが普及しているのだ。

Facebook上ではグループ内でも商品が販売されている。

今回はソーシャルコマースが主流となっている新興国の中でも、ケニアに登場したBiasharaBotというスタートアップを紹介したい。

BiasharaBotはSNS上でシームレスな商品販売を可能にするSaaSとカスタマーサポートを自動化するチャットボットを提供する。先日実施されたPangeaアクセラレータープログラムに参加しており、最終的に選出された11社のスタートアップの中から最優秀スタートアップとして選ばれている。

新興国を中心にソーシャルコマースがますます浸透していくことを考えると、BiasharaBotのようなSaaSは増えていくだろう。

今回はBiasharaBot、既存のソーシャルコマース向けのSaaSを紹介したうえで、ソーシャルコマースを利用する個人事業主や中小企業がどういった課題を抱えているのか。どういったSaaSだと新興国で受け入れられる可能性が高いのか。

ケニアの事例をもとに明らかにしていきたい。

チャットボットによるカスタマーサポートの自動化を可能にするBiasharaBot

・会社名: BiasharaBot

・設立年: 2017年

・創設者: Felix Cheruiyot氏、Moses Korir氏

・調達額: Pangeaが実施するアクセラレータプログラムで最優秀スタートアップに選出される。最大5万米ドルの出資をかけて調整、交渉が進められている。

・領域: AI×カスタマーサポート×SaaS

・サービス: SNSで商品を販売する個人事業主、中小企業向けに、AIを活用したチャットボット(カスタマーサポート)、配送、在庫管理を可能にするSaaSの提供。デジタルマーケティングサポート。

・解決する課題: SNS上での販売はそれぞれのSNSでの管理が必要になる。商品を販売した際に、顧客との連絡、在庫管理、配送手配をすべて手動で行わなければならない。SNS上での商品ブランディングにまで手が回っていない。



BiasharaBotは、SNS上で商品を販売する個人事業主、中小企業に対して、AIを活用したチャットボットサービスを提供している。

具体的には、SNS上でコメントを頂いた顧客とのAIを活用したチャットボットによる連絡の自動化、SNS上での商品の自動投稿、決済機能、配送手配、在庫管理を行うことができるSaaSを提供している。

通常、SNS上での商品販売は、商品を掲載し、コメントを頂いた後に、個人、もしくは会社の連絡先を伝え、決済の方法、商品の受け取り方法、受け取り日時などの連絡を個別にとっており、顧客との調整に多くの時間がとられることに加え、取引管理を行うことができていなかった。

BiasharaBotのサービスを利用すれば、SNS上から離れることなく、すべての取引をSNS上で完結することができる。特に時間を取られていた顧客との連絡や配送手配、在庫管理もダッシュボード上ですべて行うことができ、一括で管理することができる。

既存の顧客に対してSNSでキャンペーン情報をお送りしたい場合も、ダッシュボード上でメッセージを作成し、一括で送信できる。顧客に対してデジタルマーケティングサポートを提供しているのもBiasharaBotの大きな特徴だ。

BiasharaBotでは無料と有料の二つのプランを用意している。有料プランでは値段とサービス内容が異なる3つのプランがある。

有料プランの内、最も高いのが月99米ドルのプラン。チャットボット機能、スケジュール投稿、顧客への一括ダイレクトメッセージ機能、要望に合わせたダッシュボードのカスタマイズを行うことができる。このプランには取り扱い商品数に制限がない。

無料のプランでは、取り扱う商品は最大5商品に制限され、チャットボット機能とスケジュール投稿機能のみ利用可能となる。

ソーシャルメディアとうまく融合したプラットフォーム提供型SaaS

ケニアではBiasharaBotと違った切り口で、個人事業主や中小企業向けにオンライン上での商品販売をサポートするSaaSがある。

以前AF TECHでインタビューを行ったSky.GardenやMookhはユーザーに対してオンライン上での商品販売をシームレスに行うことを可能にするSaaSと商品販売プラットフォームを提供している。

Sky.Garden

・会社名: Sky.Garden

・設立年: 2015年

・創設者: Christian Grubak氏、Martin Majlund氏

・調達額: 180万米ドル

・領域:SaaS×プラットフォーム

・サービス: 個人事業主、中小企業向けに、独自のネットショップの開設、配送手配、在庫管理を可能にするダッシュボード、販売プラットフォームの提供

・解決する課題: SNS上で商品販売を行っている個人事業主、中小企業のほとんどが配送手配、在庫管理に時間を取られている。多くは正しく管理することができていない。

AF TECHでは以前、Sky.GardenのCMOであるIsaac Hunja氏にインタビューを実施している。

ケニアのショッピングスタイルを変革するモバイルコマース「Sky.Garden」Isaac Hunja氏へインタビュー

Mookh

・会社名: Mookh

・設立年: 2015年

・創設者: Eric Thimba氏

・調達額: 180万米ドル

・領域:SaaS×プラットフォーム

・サービス: 個人事業主、中小企業向けに、独自のネットショップの開設、配送手配、在庫管理を可能にするダッシュボード、決済手段、販売プラットフォームの提供。デジタルコンテンツ、チケットの商品カテゴリーがメイン。

・解決する課題: オンライン上で完結するデジタルコンテンツやチケットを販売できるプラットフォームがない。配送が必要になる商品を扱う場合、配送手配、在庫管理に多くの時間がとられている。

AF TECHではMookhのCEOであるEric Thimba氏にインタビューを実施している。

イベントチケットやデジタルコンテンツのオンライン販売市場を顕在化する「Mookh」共同創業者にインタビュー


いずれも、個人事業主、中小企業のオンラインショップ開設を可能にし、在庫管理、配送手配、決済サービスを提供している。また、独自のショップURLを提供し、SNS上でオンラインショップURLの共有も可能にしている。

Sky.Gardenや、Mookhを利用すれば、掲載商品はそれぞれの商品販売プラットフォームにも掲載されプラットフォーム上での集客も見込める。また、独自のショップURLをSNS上で拡散することですでにファンを抱えているSNSでも更なる集客が可能になる。

新興国でのソーシャルコマース発展のカギとなるSaaSとは

ソーシャルコマース市場を盛り上げていくSaaSとして、今回はBiasharaBotを中心に紹介した。

いずれも共通しているのは課題を抱えている在庫管理、決済、配送を解決するサービスを提供している点だ。

しかし、最終的に自社のプラットフォーム上で決済を行ってもらうのか、もしくは既存のSNS上で完結するのかのという点で異なる。

あともう一つの側面として比較したいのが集客面だ。

SNSを活用して商品販売を行う個人事業主や中小企業はある程度ファンやフォロワーを抱えていることがほとんど。

個人事業主や中小企業にとってSky.GardenやMookhを利用する場合、集客という観点でプラットフォーム上に自社オンラインショップを開設することがメリットになるのかと言われると疑問である。

もちろんプラットフォーム自体が大きく成長して、認知度が高まれば大きな集客効果を見込めるかもしれない。そのタイミングでのプラットフォーム活用は効果的だろう。

スマートフォンの容量問題もあり、サービス利用者にSNS以外のアプリを保持していただくことが難しいことを考えると、主な流入経路はやはりSNSになる。結局はそれぞれのオーナーのSNS上で独自ショップURLを拡散することに依存する。

一方、BiasharaBotはすべてがSNS上で完結するため集客という観点ではサポートは行っていない。SNS上で集客は行うことができる前提で販売サポートに特化してチャットボットによるカスタマーサポートの自動化、SaaSを提供している。

実際にSNS上で商品販売を行っている個人事業主にヒアリングを行ったところ、確かに配送手配や在庫管理、決済の部分において、毎回個別に連絡をとり、調整しなければいけないことに不満を抱えていた。

しかし、集客に関しては、すでにファンやフォロワーを多く抱えていることからそこまで困っていないということだった。

もし、個人事業主や中小企業にとって集客が課題ではないと仮定すると、BiasharaBotのように販売サポートに特化したSaaSが受け入れられる可能性が高い。

また、商品販売プラットフォームを提供するSky.GardenやMookhは商品販売毎に手数料を徴収するのに対し、BiasharaBotは月額のサブスクリプションで費用を徴収する。この違いもどう影響するのか気になる。

いずれにせよ、今回のBiasharaBotの登場によって明暗が分かれることになるだろう。

個人事業主や中小企業がどちらのサービスを支持するかで彼らの本当のニーズが明らかになる。

集客も必要としているのか。

それともSNS上での販売サポートのみ必要としているのか。

ソーシャルコマースの発展の大きなカギを握っている各社の今後の動向は注目必須だ。