熾烈な競争を繰り広げるアフリカの教育系スタートアップ3選
「こら!ちゃんと勉強しなさい!宿題が終わってからじゃないとゲームはさせません」
教育熱心な親はどこにでも存在する。何より親は自分の息子、娘にはいい高校、大学に行って、安定した仕事についてほしい。そう願うのではないだろうか。
おなじみのフレーズは、筆者も小さい頃から散々浴びてきた。いやいやながらも宿題をし、月、水、金で塾にも通った。正直、自分から好んで勉強したいというわけではなく、いやいや行かされていた気持ちが強かったと思う。
今思うとなんて贅沢な話なのだと思うが。
一方、アフリカはどうだろうか。やはり、同じく親は教育熱心だ。
なんとか子供に学校に行かせようと必死に働き、学費を支払っている。電気が届かない地域に住む親は、暗くなっても子供が勉強できるようにランタンを購入し、夜でも子供たちが勉強できるように工夫している。
しかし、日本のように放課後に学校とは別に通うことができる塾や予備校はほとんど存在しない。
しかし、教育熱心な親はどこも同じだ。子供が放課後にも通うことができる学習機関のニーズはかなりある。
いま、西アフリカに位置するナイジェリアではそのニーズを満たそうと勃興するスタートアップが熾烈な競争を繰り広げている。
彼らに共通するのは、一つのプラットフォーム上に数多くの家庭教師を抱え、学習したい生徒とその家庭教師をつなぐサービスを提供しているということだ。
一つの学習機関をつくるのではなく、各地から質の高い先生をプラットフォーム上に抱えることで、多くの人に学習機会を与えている。
熾烈な競争を繰り広げる3つの教育系スタートアップ
Prepclass
1つ目は2014年に創業されたPrepclass。オンライン上で生徒と家庭教師をマッチングさせるプラットフォームを展開している。学校のテストや、入学試験の対策をするための学習機会を提供している。
家庭教師による個人のレベルに合わせた指導はもちろんのこと、ユーザーはオンライン上で試験の過去問を受けることもできる。試験の答えの解説も細かく充実している。
そのため、解説をみてもどうしてもわからないといったときに家庭教師による指導を受ける選択をすることができる。
Prepclassでは、サービス受講後に受けた試験で75%以上の結果が出せなかった場合は全額返金を行っている。それだけサービスの質には自信を持っている。
彼らがサービスの質に自信を持っている理由には家庭教師としてプラットフォーム上に登録されるまでのフローにある。
家庭教師として登録されるにはまず、オンライン上、もしくは電話による面接が行われる。
電話による面接を通過した候補者はオフィスを訪れ、再度面接、ライティングテスト、実技テスト(Prepclassの社員さんに対して講義)を受ける。
さらに、それらのテストに加え、履歴書をもとにバックグラウンドチェックも行い最終的な判断をしている。
Prepclassの定める基準に達していれば合格となり、プラットフォーム上に掲載されることになる。
そのような厳しい面接を通った家庭教師のみが掲載されているため、質の高い講義を提供することができるのだ。
Tuteria
2つ目に紹介するのは2015年に創業されたTuteriaだ。同じくプラットフォーム上で家庭教師と生徒をマッチングさせるサービスを提供している。
Tuteriaでは、学生向けのテスト・試験対策だけでなく、経済や会計などのビジネス、プログラミング/WEB、音楽、美容、アートなど幅広いジャンルの家庭教師を抱えているのが特徴だ。
ナイジェリアでは、試験対策を行っている塾や予備校を探すのはもちろんのこと、プログラミングや美容、アートに関して学ぶことができる機関がほとんどなく、そういった専門的な分野の学習をすることが難しいという現状がある。
そのような現状を打破すべく、試験対策のための家庭教師だけでなく、幅広いジャンルから家庭教師を選ぶことができるプラットフォームを展開しているのがTuteriaだ。
Tuteriaはプラットフォーム上での一件の予約につき、15~30%の手数料を課すことで収益化している。
家庭教師側にとっては、指導時間、指導生徒数によって変動し、レッスン料の内最大で85%分を得ることができる。新しく登録された家庭教師は70%からスタートする。
Dolessons
3つ目に紹介するのは今年創業されたばかりでまだまだ参入したてのスタートアップDolessonsだ。
Dolessonsも同様に、プラットフォーム上で生徒と家庭教師をマッチングさせるサービスを展開している。
後発のDolessonsでは、家庭教師マッチングサービス、オンライン上でのトライアル試験サービスに加え、無料で講義動画も提供している。
つまりDolessonsでは基本的には動画でレッスンを無料受講し、どうしてもわからない、もしくは強化したい科目に対してのみ家庭教師を呼んで対策をするという選択ができる。
また、Dolessonsでは、プラットフォーム上にEC機能も搭載されている。出版社と提携しており、プラットフォーム上で教科書や参考書を購入することができる。
Dolessonsのプラットフォーム経由で800回を超えるレッスンを提供している。サービス自体もユーザー、家庭教師両方のフィードバックをもとに改善しており、毎月20%の成長を続けている。
競合ひしめくマーケットでそれぞれの強みを尖らせる展開に
今回は、西アフリカのナイジェリアで盛り上がっている教育系スタートアップ3社を紹介した。いずれも何かを学びたい人と何かを教えることができる人をマッチングさせるプラットフォームを展開しているという点では共通している。
一方で、いかにユーザー(ここでは学びたい人)のニーズに答えるかという点で各社異なる戦略でサービスを展開しているのが面白い。
1番初めに紹介したPrepclassは、完全に学生向けのサービスに特化しており、テスト対策や入学試験対策に特化しているのが特徴だ。さらに、講師の質の担保に関しても、独自で厳しい基準を設けており本当に質の高い講師のみを扱っている。学べることが明確で、目標(有名な大学に入学など)に対して圧倒的な成果を求めることができるのがこのサービスであろう。
2番目に紹介したTuteriaは、学生のために試験対策だけでなく、ビジネスや美容、プログラミングなど幅広いジャンルにおいて学ぶ機会を与えている点が最大の特徴だ。ナイジェリアでなかなか学ぶことが難しい分野でも、その道の詳しい人から学ぶことができるのは非常にメリットであろう。
一方で運営面に関してだが、プラグラミングや美容について詳しい講師をどのように集めているのかが気になる。またその質の担保はしっかりとなされているのかという点が疑問だ。
3つ目に紹介したDolessonsでは、動画学習コンテンツを提供している。こちらは動画で学習できるという点で競争優位を見出している。学校のテスト対策や入学試験対策用の学習支援ツールに加えて、動画でも学習することができるのがこのサービスのポイントだ。実際に講師を呼んで講義を受ける前に動画コンテンツで学習して、どうしてもわからなければ講師を呼んでわからなかったところを教えてもらうといった選択ができる。
ただし、気になったのはナイジェリアのネットインフラがどれほど整っているのかという点だ。単純にウェブを閲覧するくらいであればそこまでデータ通信量も多くはないと思う。しかし、動画コンテンツを閲覧すればかなりのデータ消費量となる。通信料も高く、動画もスムーズに見られないとなれば意味がない。自分の家でスムーズに動画を見られる人がどれくらいいるのかが気になる。
まとめ
最近、日本の教育シーンでは、スタディサプリなどのサービスを利用して、スマホアプリの動画で講義をうけるスタイルが流行っている。
場所も時間も縛られず、いつでも、どこでも動画で授業を受けることができ、質の高い講義を何度も見ることができるのが流行っている理由であろう。
日本において最近主流になってきている流れが、西アフリカのナイジェリアでも起ころうとしている。ただし、日本と同じように動画が支流になるかはわからない。彼らのニーズ、そして懸念点を解消したサービスが流行っていくことになるのだろう。
今回紹介したサービスの中で、どれがユーザーに強く支持されるのかとても楽しみだ。この3社を追っているだけでも、今後アフリカでの教育分野がどのような発展を遂げるのか占うことはできるだろう。
それだけにこの3社のサービスは注目に値する。
スマホとインターネットがあるだけでどこでも学ぶことが可能になった。どれだけ学校や専門機関にアクセスできない地域に住む人でもこれらサービスのおかげで幅広いサービスを享受することができる。
アフリカの名もない村からとんでもないプログラマーがでてきてもおかしくない。
アフリカにおける、教育分野はリープフロッグ現象が起こりえる分野の一つだと思う。