アフリカの中古車市場をディスラプトするスタートアップ3社まとめ

6月 20, 2018注目スタートアップまとめ,ナイジェリア,中古車,南アフリカ

日本では10万キロ走ればもう、無価値と言われるが、新興国においては、まだまだ乗れる。むしろ新品といった印象だと言う。実際に、ケニアでタクシーに乗った際にドライバーに言われたことがある。彼はトヨタの中古車を運転していた。

ドライバー:「なんで日本の中古車は10万キロしか走ってないんだ?」

筆者:「いや、10万キロも走っていますよ。」

ドライバー:「全然走ってないね。」

筆者:「日本では基本的には休日にしか乗らない人がほとんどなんです。ほとんどの人が通勤手段として電車を使うし、買い物の時もスーパーマーケットが近くにあることがほとんどなので、平日もあまり使うことがないんです。だからあんまり走ってない車がほとんどなのかと。」

ドライバー:「そうか…」

ドライバーが納得したかどうかはさておき、自分の思いを伝えたのでよしとする。(※上記はすべて筆者の見解であり、すべての人に当てはまるとは限らない。)つまり筆者が訪問したケニアなどアフリカ諸国においては、まだまだ新車を買うには手が届かないことが多く、ほとんどの人が丈夫な日本メーカーの中古車を購入している。

実際日本からアフリカへの日本車の輸出は、2013年には約27万台から、2014年には約28万台へと増加している。全世界合計では、アフリカ向けの中古車輸出台数は約230万台にものぼる。

ケニアに滞在していると多くの日本の中古車を目にする。というよりも、日本車しかないのではないかというほど、日本の中古車であふれている。

今回紹介するのは、アフリカの中古車販売を促進する、中古車販売プラットフォーム、中古車買い取りサービスを展開するアフリカのスタートアップだ。

アフリカの中古車買い取りプラットフォーム

HiCarByeCar(南アフリカ)

HiCarByeCarは、オンライン上で車を売りたいユーザーと、販売代理店をつなぐプラットフォームを提供しているスタートアップである。このサービスは南アフリカで展開されている。

個人で独自にディーラーを見つけて、車を売ることはかなり困難で、やっと見つけたディーラーであっても、ディーラー側は強気で交渉できるため、ユーザーが納得する値段での販売は難しい。何よりリスクが高いというのが現状であった。

このプラットフォーム上では、車の車種や、状態など必要な情報を記載し、売りたい車の写真を投稿すれば、HiCarByeCar独自のアルゴリズムで近くの複数ディーラーとマッチングするようになっている。また、48時間以内に、それらのディーラーが指定した金額の上位3つが車を販売したいユーザーに表示され、ユーザーは最低販売価格が保障された中で、自分が販売したいディーラーを選択することができる。

2016年6月のローンチから、同年11月までに、プラットフォーム上で提示された額は約1500万円程にも上り、数百台の車が売られたという。この状況をうけ、HiCarByeCarは一般ユーザーとディーラー間の取引だけでなく、ディーラーとディーラー間の取引も開始した。これは、承認されたディーラ同士の取引を可能とするものである。ディーラの詳細情報、連絡先等が表示されているため、安心して取引を行うことができるようになっている。

carzar(南アフリカ)

CarZarは中古車買い取りプラットフォームを提供するスタートアップである。このサービスは、オンラインで中古車の価格の見積もり、無料検査の手配、予約を行うことができる。車のメーカー、モデル、その車の販売年、傷、走行距離をオンライン上で記載すれば、簡単にオンライン上で見積もりを取ることができ、Carzarのデータに基づいた見積もりで、販売価格を割り出してくれる。その後、無料で車体検査を行ってくれ、彼らが提示する金額で納得がいけば、販売し、お金の受け取りという流れになる。無料での検査後は頂いた見積もりをもとに、売るか、売らないかを決め、売る場合は、売った日にお金が売主のもとに着金する。

car45ng(ナイジェリア)

cars45は、ナイジェリア発のスタートアップで、オンラインでの車の買い取り価格の見積もり、車体検査、車の買い取りを行っている。先ほど、紹介した、南アフリカのcarzarのサービスとほとんど同じで、オンライン上でメーカー、モデル、年代を入れれば、無料で見積もりが表示される。その後車体検査の日程を予約し、検査が終われば、後は売るか売らないかの判断をするだけである。もし、売る場合は、売った後45分以内にお金が入金される仕組みになっている。

cars45はシリーズAラウンドで500万米ドル調達している。

最後に

アフリカで、中古車を適正な価格で購入してくれる業者を探すのは一苦労である。せっかく購入してくれる業者を見つけたにも関わらず、法外な値段で購入を提案してきたリと、安心で、適切な業者を探すのは困難を極める。その点で、プラットフォームがあることによって、信頼面を担保し、適切な業者を選ぶことができるのは大きな利点である。

一方で南アフリカでは、ライドシェアという概念も生まれつつある。代表的なスタートアップが、cartripugomywayなのだが、こちらは、行先が同じ人どうしをマッチングし、目的地まで一緒に向かうサービスだ。

モノを所有する価値観から、コトを体験する価値観に流れつつあるのは言うまでもない。

まだまだ、中古車の需要が大きいアフリカ市場ではあるが、今後、中間所得層の増加によって、新車の購入ユーザーが増えるのか、それとも、このままライドシェアの流れになるのか。まだ、現在の市場は読み切れないところが多いのかもしれない。

また、これはカナダの事例ではあるが、道端で車が故障してしまったときに、FIIXと呼ばれるカナダ発のスタートアップで、車の修理士の方をアプリで呼ぶことができるサービスも登場している。こちらも中古車市場が盛り上がっているアフリカで上記のようなサービスが登場すれば、切っても切り離せない存在になるのではないかと予想する。

現状、アフリカでは、車が故障したときには、その場しのぎの修理をすることが多い。そのため、走り出すとまたすぐに故障してしまう悪循環に陥っている。

まだ、鉄道等のインフラが整っていないアフリカ諸国にとって、車は通勤、通学に必須な存在である。アフリカでの自動車関連ビジネスはまだまだ成長市場であることは間違いない。