スタートアップが数多く登場する国「シリコン・サバンナ」ケニアの実情

6月 2, 2018コラムケニア

ケニアは皆さんが想像するようなアフリカではない。

ケニアは東アフリカのシリコンバレー、通称「シリコン・サバンナ」と呼ばれており、アフリカの中でもスタートアップが数多く誕生する国の一つだ。

Partech Venturesが発表したアフリカ年間投資額レポートによると、アフリカ内スタートアップへの総投資額は5億6000万米ドルとなっており、そのうち、ケニアは約3割(1億4700万米ドル)の投資を集め、南アフリカに次ぐ投資額の大きさとなっている。

なぜアフリカ内でケニアに投資が集まっているのか。

理由としてあげられるのが以下3つだ。

1.M-PESAの存在

2.驚異的なネット普及率の高さ

3.スタートアップの成長を支えるインキュベーション施設の存在

ケニアにはこれらのベースがあることで、ケニア内のスタートアップエコシステムが整い、投資が集まる理由になっているのではないかと考えている。

電話回線を利用したお金の送金サービス「M-PESA」

街のそこらじゅうにM-PESAショップ、エージェントがある

ケニアでは、2007年にケニアの通信会社である「Safaricom」がサービスを開始した「M-PESA」が国民のほぼ全員に浸透している。

電話番号とケニアのナショナルID(外国人であればパスポート)だけで、簡単に登録でき、SMSを送るような感覚でお金を送金することができる。

このM-PESAはお金の送金に電話回線(USSD)を使用しているので、ネットへの接続は必要なく、ガラケーでもお金を送金できるのがポイントだ。

ケニアではこのサービスが10年以上も前から開始され、今や当たり前のように利用される送金インフラとなっている。

経済的な理由で、銀行口座を持つことができない人や出稼ぎで稼いだお金をすぐに家族へ送金する手段として、爆発的に普及した。

現在、M-PESAの流通額はケニアのGDPの約半分を占めている。

M-PESAの利用方法

窓口でお金の預金が可能

Safaricomショップ、もしくは、キオスク(小規模小売店)で現金でお金を預金(チャージ)することができる。

小売店で何か商品を購入するときには、それぞれの小売店がもつM-PESA用の独自の番号(エージェント番号と呼ばれている)を携帯上に入力し、購入金額を入力して、M-PESA登録時に設定した暗証番号を入力すれば、送金が完了する。

個人にお金を送金したい場合は、電話帳から送金したい人の電話番号を選択し、送金金額を入力し、最後に登録時に設定した暗証番号を入力しOKボタンを押せば送金は完了する。

M-PESAの利用用途は、小売店での商品の購入はもちろん、子供への仕送り、通信料の購入、友人へ借りたお金の返済、学校の授業料の支払いなど幅広い。

EC上でもM-PESAを利用して支払いを行えるため、クレジットカード決済といったペイメントソリューションはあまり必要なく、M-PESAで決済が行われる。

このM-PESAがあらゆる面でケニア内のサービスの成長を助長しており、送金・決済というインフラが整っている点で企業にとってサービスの開始、受け入れがしやすい状況にある。

ネット普及率86%という驚異的な高さ

ケニアのネット普及率は86%と言われており、アフリカ内で1番。

そして、ネットのスピードもアフリカ内では2番目に早く、もはやWIFIより通常のネット接続の方が早い。

この異常なまでに発展したネットインフラもケニアに投資が集まっている理由のひとつなのではないかと考える。

ネット普及率の高さによって、ITを活用したサービスが生まれやすい状況にある。

例えば、ITとM-PESAをうまく活用したのが、マイクロローンサービスだ。

ケニアでマイクロローンサービスを提供するスタートアップは、毎日1ドル以下の生活をしていて、フォーマルな金融サービスを享受できないBOP層と呼ばれる人に対してサービス提供をしている。

彼らの電話帳や通話履歴、M-PESAの利用履歴といった内容にアクセスし分析することで独自の信用スコアを算出し、お金を貸し出している。

ケニアのマイクロローンスタートアップは、M-PESAと連携してサービス提供されており、利用者は銀行口座を持っていなくても、サービスを享受できる。

貧困層にお金を送金する手段(M-PESA)とネット環境が整い、新たなテクノロジーを効果的に活用できるからこそケニアでマイクロローンは普及している。

インキュベーション施設の存在

最後は、インキュベーション施設の存在だ。

Nairobi Garage」や「i Hub」、「Nailab」といったインキュベーション施設の存在がケニアでスタートアップを生み出す源泉となっている。

現在ケニアには、インキュベーション施設が27拠点ほどあると言われており、彼らによる、ワークスペースの提供、メンタリング、海外投資家の招待といったサポート体制がスタートアップの増加、成長の一助を担っている。

USやUKの投資家もケニアに注目しており、インキュベーション施設に定期的に訪問し、投資先となるスタートアップを探している。

Nairobi Garageに入居するMedius創業者のお二人

例えば、インキュベーション施設の一つ「Nairobi Garage」には、総額1000万米ドルの大型資金調達を実施しているマイクロローンスタートアップBranchや、インフルエンサーマーケティングサービスを提供するMediosグローサリーデリバリーサービスを提供するWagon Shoppingといったスタートアップが入居している。

こういったテクノロジーを活用したスタートアップが生まれやすい状況にあるのが、今のケニアなのだ。

これが「シリコン・サバンナ」と呼ばれるケニアの実情だ。

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