自転車が広告に?!~Mozambikes~

7月 28, 2020注目スタートアップモザンビーク,モビリティ

電車やバスなどを安い料金で利用できる日本の公共交通は世界的に高く評価されている。
初めて日本を訪れる人は、まさに蜘蛛の巣状に張り巡らされた東京の路線図を見て驚くだろう。

アフリカでは公共交通が整っていない地域が多い。
都市部では乗り合いバスやバイクタクシーが所狭しと走っていても、ひとたび農村部に足を運べば、地元の人の主な移動手段は徒歩だ。

移動手段がないということは、働く場所の制限や、学ぶ機会の減少、医療機関への受診機会の減少など、多くの面でデメリットが考えられる。
この状況を改善しようと取り組むのが、今回ご紹介するモザンビークのスタートアップだ。

自転車でチャンスを得る

Mozambikesは、モザンビークで低価格で高品質な自転車を販売している。 2009年にLauren Thomas氏とRui Mesquita氏の2人が設立した。設立のきっかけは、2人がモザンビークの農村部で見たとある様子からだ。それは、重い荷物を背負って長い距離を歩いている住民の姿だ。

モザンビークの農村部では、移動手段は徒歩が多い。
そのため、長距離を歩いて水を汲みに行く姿や、大きな荷物を背負い市場に食品を運ぶ姿などが見られる。

このような現状を知り、2人は低価格で質の高い自転車の販売を始めた。

自転車は、地元の企業の協力を得て作られる。
Mozambikesは自転車のフレームに企業の広告を掲載することで広告収入を得て自転車製作のコストを抑え、企業もその自転車が農村部を走ることでこれまでリーチできていないエリアでの宣伝効果が狙える、win-winのビジネスモデルだ。

また、自転車の寄付も受け付けるなどして更なるコストダウンを目指し、販売台数を増やす計画だ。

さらに、販売している自転車はモザンビークで使いやすいよう様々な工夫が施されている。

タイヤは幅を広げ、パンクのリスクを減らし、耐久性も高めている。サドルの後ろについている荷台のサイズを大きくし、耐久性も高めることでより多くの荷物が積めるようになっている。さらに、フロントライトとして取り外し可能なLEDライトが搭載されているため、家庭に電気がない夜には家で使うこともできる。

その他にも、自転車の細部にわたるまで13か所に安全性と利便性を高める改良がされている。

自転車がもたらす生活の変化

自転車を使うことでどのように生活が変わるのだろうか。

たとえば、野菜や果物が売られるマーケットで店を出す人は、これまで収穫したり仕入れたりした何十キロもの売り物を背負ってマーケットまで歩く必要があった。徒歩では持てる量に限りがあるだけではなく、長時間歩かざるを得ないことで売り物の鮮度が落ちたり、店を開けられる時間が短くなることも課題だった。
この問題が自転車によって改善されれば、農村部の人々の収入増加にも貢献できる。

また、自転車に乗って移動できる範囲が広がることで、医療機関や教育機関へのアクセス改善も期待できる。モザンビーク国内では、自宅から最寄りの医療機関までの距離は平均して30㎞あると言われている。徒歩となると30㎞は途方もない距離だが、自転車があれば病院にかかれる機会も増えそうだ。

Mozambikesは、2020年内に12万5000人に自転車を提供するための販売や流通ネットワークを作ることを目標としている。

自転車が普及することで、自転車を修理するなど、今まで必要とされていなかった仕事が生まれるだろう。自転車の普及が、住民の生活の質を向上させ、新たな事業や雇用が生まれていくのではないだろうか。

会社名Mozambikes Social Development, Inc.
設立年2010年
創業者Lauren Thomas氏(アメリカ)  Rui Mesquita氏(ポルトガル)
展開国モザンビーク
領域モビリティ
サービス自転車販売
解決する課題交通手段のないエリアの利便性向上
独自の強み地元企業との連携
調達金額未公開
ウェブサイトhttps://www.mozambikes.com/
連絡先info@mozambikes.com +258 82 821 7825