オフラインでアフリカの通勤バスの予約ができるMagic bus Ticketingとは

11月 26, 2017注目スタートアップケニア,プラットフォーム

Iman Cooper、Sonia Kabra、Wyclife Omondi、Leslie Osseteによって現在テストリリースされているのが、Magic bus Ticketingである。このサービスはSMSでのテキストベースでアフリカはケニアのナイロビにおける通勤バスの座席の予約を行うことを可能にする。

彼らはアメリカのインディアナ州にあるア―ラム大学在学中に出会い、2016年に開催された世界を変えうるトップ5のサービスを決める学生の大会、Hult Prizeで応募アイデア25000の中からファイナリストの5組まで残り、見事ファイナリストであった他4つのアイデアを差し置いてグランプリを受賞している。賞金として100万ドルを得ている。

今回はケニアの首都、ナイロビにおいて、今後の通勤に大きなインパクトを与えうるであろうMagic bus Ticketingについて紹介する。

Magic Bus Ticketingとは

Magic bus TicketingはSMSによって通勤バスの予約、バスタイプの選択、費用の支払いすべてを完了させることができるサービスである。

利用ステップは簡単で、まず、日本ではガラケーと呼ばれる携帯、もしくはスマートフォンを用意する。あらかじめ、Magic Bus Ticketingによって定められているショートコードを入力。

すると、乗車地、降車地を選択する画面が表示される。目的地、降車地が記載されている番号を入力すれば、利用可能なバスが表示される。

その表示画面には、バスプレートの番号、乗車地に到着するまでにかかる時間、バスの乗車料金が記載されており、2~3個表示されているバスの選択肢から、値段、かかる時間等を考慮して、自分が乗りたいバスを選択し、確認ボタンを押せば予約は完了する。

その後支払い画面になるのだが、そちらも同様ケニアで有名なM-PESAと呼ばれるお金の送金サービスを利用して支払いが完了される。

Magic bus Ticketingの利用にあたって、インターネットによるデータ通信は一切必要がない。すべてがSMSによるテキストメッセージによって完結するのである。

ケニアにおける深刻な通勤問題

ただ、なぜケニアにおいてこのようなサービスが必要なのか。日本に住む人からすれば全くもって想像できないことかもしれない。当たり前のように、地下鉄はあり、バス停にバスがちゃんとくれば、バスの料金をぼったくられることもない。ピーク時間には少しの混雑は避けられないものの、安心してサービスを利用できる環境が日本には揃っている。

一方で、ケニアにおいては状況は大きく異なる。ケニアの首都であるナイロビは世界で4番目に通勤において大きな問題を抱えている都市とされている。渋滞は頻繁に起こり、さらにバスの料金は固定料金ではなく、バスやドライバーによって変動する。ナイロビには、250万人の人々が暮らしているが、そのうちなんと70%の人が現在のバスシステムに依存しているという。

現在ナイロビにはプラベートセクターが運営するバス(ケニアではマタツと呼ばれるバス)が20000台あり、1台のバスに対しておおよそ33人から45人の人が乗車している。料金は日本円にして約50円から150円である。

これらのバスに乗るために、バス料金の支払いには長蛇の列ができ、バス到着の待ち時間に2時間かかることもある。到着したとしても、乗車数が定員に満たしていれば乗ることはできない。なんとも不便で、フラストレーションがたまる状況である。

とくに一部のケニア人ワーカーにとって通勤がうまくいかないことによって、半日働くことができなければ、その日の給料は単純に半額になる。通勤バスの仕組みが改善されるだけで、以前より2倍の給料を稼ぐことができるようになるのだ。

彼らににとって、通勤バスにちゃんと乗れるか、乗れないかで今日の給料が決まるため、事前に座席を予約することができるだけで、状況は大きく変わる。

最後に

ケニアにおける上記で述べた状況に課題を強く感じ、それらの解決に取り組んでいるのが、現在パイロット版がリリースされているMagic bus Ticketingである。ナイロビにおける通勤事情はかなり深刻であることがお分かりいただけたであろう。しかし、Magic bus ticketingによって今後、バスによる通勤において大きく改善がみられていくことになるだろう。

現在パイロット版としてリリースされており、10台のバスとサービスが連携されている。すでに2000人のユーザーに利用されており、5000枚のチケットが予約されている。今後はケニアの他都市への展開を検討している。

ファウンダーの1人であるCooperはこう述べている。

通勤(通学)は、何百万人の人にとって、仕事をするため、教育を受けるため、サービスを受けるため、その他あらゆることに対して、必ずしも必要とされることである。安心で安全な通勤手段を提供することは社会にも大きなインパクトを与えることができるだろう。

私たちは安心、安全な通勤手段があるために、様々な活動を行えているのだなと強く実感した。今後もケニアにおける他都市への展開に期待したい。