じげんが中古車事業でアフリカ進出!事業責任者に直撃インタビュー!Vol.1
「生活機会の最大化」を理念に掲げる日本のスタートアップ「じげん」が海外進出第一弾としてアフリカに進出する。生活機会とはじげんが独自に定義する、「人々がより良く生きるための選択肢」のことを指している。
日本においては、2006年の創業から、人材、不動産、自動車など生活に関わるサービスを数多く展開してきた。
創業から約10年がたった今、アフリカ向けの中古車輸出事業Car-Tana(カタナ)を展開すると発表した。
「なぜこのタイミングだったのか」
「なぜアフリカなのか」
聞きたいことは山ほどある。それほど衝撃的なプレスリリースだ。
アフリカでは日本の中古車はすごく人気だ。日本の人にとっては10万キロほど走ればもう乗り換えの時期だなんて言われるが、アフリカでは「10万キロなんて新車同然だ」とも言わんばかりの人気である。
そのためアフリカでの日本の中古車ニーズは絶大だ。
しかし、もちろん日本の中古車を扱う企業も数多くアフリカ向け中古車輸出市場に進出している。そのため競争は必須だ。
今回、AF TECHではじげんのアフリカ向け中古車輸出事業の責任者へのインタビューを行うことができた。
じげんのアフリカ中古車輸出事業の「ナゼ?」をひも解いていくことにする。
インタビュイーのご紹介
前職では車の買い取り、販売を行う会社が買収した先で約2年の代表経験を経て、じげんにジョイン。じげんではかねてから海外向けの中古車輸出事業を展開したいという小澤様の思いと、中古車輸出事業経験時の人脈、そしてじげんのグローバル戦略も相まって責任者として当事業の指揮を執っている。
「Car Tana(カタナ)」の事業内容
高品質な日本の中古車を求める海外ユーザーと海外に中古車販売したい輸出会社や中古車販売店を繋ぐ中古車輸出プラットフォームを展開する。同プラットフォーム上で、ユーザーは最新の国内中古車販売情報を一括検索・お問い合わせができる。特にケニア向けには「自動車ローン」を組み、分割払いできる仕組みを提供している。
詳細なビジネスモデルは以下である。
じげんがアフリカ向けの中古車事業を開始
日本で生活に関わるサービス数多く展開しているじげんですが、このタイミングで海外進出することになった理由はなんだったのでしょうか?
じげんではもともと自動車分野では「中古車EX」を初めとする国内向けのサービスを提供していまして、2017年3月期のじげんグループ主要事業で最高の成長率を達成していました。
こうした直近の自動車領域での知見と実績を礎に、中古車販売に従事する皆様に貢献すべく次の展開を考えていく中で、特に新興国での日本の良質な中古車需要の高まりに注目するに至り、本格的なグローバル進出が決まりました。
加えて、個人的なお話をしますと、何より私自身が海外×中古車の分野で新規事業に挑戦したかったということがあります。
実は私は2016年の10月にじげんにジョインしたばかりで、前職が車の買い取り・販売をしている会社だったんですが、その会社が買収した、中古車ECサイトを運営する会社の代表を2年ほど経験させていただきまして。
それまでは国内側しか知らなかったんですが、そこで、ケニア、タンザニア、その他アフリカ諸国、あとはニュージランドなど全世界向けの中古車輸出輸出に携わりまして、グローバル展開の大きな可能性を感じていました。
ところが、前職では、途中で断念せざるを得なくなり、他社で先行投資してくださっている方もいらっしゃったので、何とか形にしたいという想いがありました。その思いを代表の平尾に伝えたところ、意気投合しまして。
じげんの経営戦略と小澤さんの海外×中古車で新規事業に挑戦したいという思惑がうまくマッチした形だったのですね。じげんではいつごろから海外進出を検討していたのですか。
海外拠点でいうと、じげんはエンジニアの採用を全世界に広げ、開発をより加速させるため、2013年にベトナムに海外戦略子会社「ZIGExN VeNtura」を設立しています。そこでフィジビリティスタディとしていくつかグローバル向けのWEBサービスも展開していましたが、あくまで国内向けの事業を拡大していくことに軸足が置かれていました。
ですので、今回のカタナで本格的なグローバル展開を始めたことになるかと思います。
情報の非対称性によって最良の選択肢を見つける機会を逃している人は国内だけでなく全世界に存在しますし、じげんは国内に閉じずにそういった社会課題と向き合っていきたいと考えています。
しかしながら、海を越えることによってステークホルダーが2倍、3倍に増えるので、グローバル展開には十分な準備期間と豊富な人脈、その領域に特化した知見が必要です。
会社として機会を伺っていた中で、自分ともう一人中古車輸出側にいた人間がじげんに入ってきて、その人脈を活かして、新規事業立ち上げが一気に加速してきました。
海外の中古車事業であれば、オセアニア、中東、南米などたくさん輸出先がある中で最初にアフリカを選んだ理由はなぜだったのでしょうか?
ケニアではオートローンを巡る技術とカルチャーが根付いていたことが、カタナのスピーディな起ち上げにプラスになると考えました。
また、毎月出ている中古車輸入台数統計ではケニアは3位、4位に食い込んでくる国です。マーケットも十分に大きく、人口の増加を考えると、さらなる成長のポテンシャルを秘めていたというのも理由の1つです。
なぜ中古車輸出事業においてオートローンが重要だったんでしょうか。
日本でも車を購入しようとなったら多くの人がオートローンを組みますよね?ケニアでも同じで、一括購入するのは富裕層のみで、自動車を購入する際、9割程度の人がローンを組んでいます。
カタナは富裕層の方だけでなく、アフリカで日本の中古車を必要としている多くの方、特に年収30万程度で生活するBOP層の方に日本の中古車を購入する新たな選択肢として提供するプラットフォームです。
だからこそ分割払いができるオートローンをサービスの中で提供していくことはとても重要でした。
もう少し具体的にお話すると、おおよそ東アフリカへの1台当たりの中古車の単価が50~60万円くらいで、年収30万とするとその2倍程度に相当します。
日本でも年収の2倍の金額のものを一括で支払うというのは厳しいと思います。現地のケニアの人ももちろん一括で買うことなんてできません。それなのに日本の海外向け中古車輸出サイトにはそういったファイナンスサービスを提供するものはありませんでした。
一つのプラットフォーム上で中古車の販売からオートローンまで一貫して提供することで、今まで自動車の購入を諦めていた層にもアプローチすることが可能になるんですね。
はい。現地ディーラーを利用すればローンを組むことは可能なのですが、中古車の流通量が限られていて、場合によっては品質に問題がある車を割高で買うことしかできないという現状があります。
そんな中、アフリカでは直近、スマートフォンの普及率も急激に高まっており、スマホが使えることでECサイト上で購入するという層が増えてきました。
ただ、日本の中古車ECサイト、海外も含めてかもしれないですけど、ほとんどが一括購入のみになっており、オートローンが組めない。オートローンを提供する場合、日本の会社にもかなりのリスクがあるためそれをプラットフォームとして提供するのは難しいということで提供できていなかったんです。
なので、ECサイトの方が総額としては安いにもかかわらず、分割払いに対応していないせいで結局買えないという…
今回の中古車事業では、現地の会社と提携してオートローンを提供するということだと思うのですが、提携先との関係はどのようになっているのでしょうか?
現地側のファイナンス会社でして、フランス資本の会社のケニア現地法人になります。預貯金残高もかなりある結構大きな会社です。前職の人脈で紹介していただき提携に至りました。
支払が滞る場合のリスクへの対策としては、じげんのプラットフォーム上から販売する中古車に関しては、車内にGPSモジュールをつけます。このGPSモジュールは普通のGPSではなくて、遠隔でエンジンを止められる機能がついたGPSモジュールになります。
この仕組みがあれば、仮に支払いが滞ってしまった場合でも国外逃亡はできず、車両を回収することが可能です。オートローンの審査基準を通常より下げて提供することが可能になります。より多くの人がオートローンを利用することができるようなスキームになっているんです。
また今回大きかったのは「マシャリキライズ」というケニア現地側のディーラーさんと提携できたことです。やはり現地での窓口になってくれたり、中古車の故障対応であったりを担当していただけるというのはこちらとしてすごく安心です。
車関係のリスクは当然輸出会社側も負いますが、現地側でも対応できるような仕組みになっています。
遠隔でエンジンを停止することができるGPSモジュールですか?かなり衝撃的です。詳しく教えてください。
支払いが滞ると遠隔でエンジンを停止させることができます。もちろん運転している間には止めることはできないんですけど、夜中とか、車を動かさない時間にエンジンを始動できない状態に変更ができます。
今まではキーを回せばエンジンがかかっていたものがかからなくなるということですね。
さらに基本的なGPS機能を使えば、その車がどこにあるかを24時間体制で特定できるんですよ。
ファイナンス会社はGPSを頼りに直接会いに行って、交渉を行うことができる。もし、今後もローンを返済する見込みがないのであれば、車を回収する可能性もあります。
車を回収すれば、またその車を再流通させることができるのでリスクは格段に小さくなります。常に担保として車がある形ですね。
ローンを払う側も車を運転することができなくなるので、通常のローンより払わなきゃっいけないという意識は高まるじゃないですか。スマホも電話料金を払わないと使えないから払うじゃないですけど、この仕組みでローンの返済に対する意識も変わってくるんじゃないかと。
このような仕組みで中古車を販売する会社は他にはなかったのですか?
そうですね。初めてだと思います。
実は日本にも同じような仕組みでサービスを提供している会社は1社あるんです。そこは現在は東南アジア向けにサービス提供をしています。
ただアフリカの中古車輸出領域の中で、アフリカの現地法人と提携してサービスを提供するこの座組みはじげんが初めてだと思います。
そういったリスク対策の面では現地の方が進んでいたということは実際に現地に行ってみて話をしていく中で分かってきたことでした。
ところで、日本からアフリカへの中古車輸出台数はどれくらいあるのですか?
大体、年間で120万台くらい輸出されているんですけど、そのうち20%くらいがアフリカへの輸出です。経産省から中古車輸出統計という統計が出ていまして毎月更新されています。
じげんはどれくらいのレンジの中古車を扱う予定なんですか?
もちろん輸出に直結しやすい価格帯や車種を扱っていきたいですが、在庫数、データベース数を多く集めないとこちらの送客側にも影響してしまうので、今のところはとにかく内容よりも量を取りにいく段階で、今はその営業強化中です。
いわゆる日本の中古車販売店さんにカタナに在庫を載せませんかという国内側の営業ですね。
競合さんに対するじげんの強みを教えてください
結論から言うとやはりオートローンが使えるという点が最大の強みになります。
また、チャイナショックもあって、ここ2年くらいの中古車輸出会社は体力勝負になっている部分がありました。自社でECサイトを運営している大手輸出会社でさえ、2万台、3万台あった在庫が、一時期は8000台くらいまでに落ち込んだ時期もありました。なかなか投資ができなかったというのがここ2年間の中古車輸出業者だったと思います。
彼らは在庫を持っていることが武器でもあり、リスクでもあります。じげんの場合は無在庫で輸出ができるポータルサイトという立ち位置で仕組みをつくった点が強みになってくると思います。
資金面的にも国内側の売上で得た利益をカタナに投資できることも他社との差別化になってくるのかなと思います。
じげんが中古車事業でアフリカ進出!事業責任者に直撃インタビュー!Vol.2に続く。
次回は、現地企業とどのように提携に至ったのか。アフリカへの中古車輸出事業のこれからのビジョンについてお伺いしました。